院長のひとり言

遺残卵胞とhCG注射

遺残卵胞とhCG注射



不妊治療を行う上で知っていて欲しいhCG注射について。

今回はhCG注射と遺残卵胞の関係についてお伝えしたいと思います。

hCGは妊娠が成立すると分泌されるようになる糖タンパク質で、絨毛性性腺刺激ホルモンと呼ばれる妊娠すると胎児と母体をつなぐ胎盤の一部、絨毛の細胞で作られているんです。

通常、妊娠していない女性や男性の体内では産生されていないものになります。

このhCG、LHとよく似ていることから卵胞を成熟させ、排卵を促進する目的や黄体ホルモンを補充によく用いられます。

hCG注射には卵胞を育てる作用はありませんが、育った卵胞から確実に卵子が出るようにする排卵刺激となる作用があるんです。

また、黄体ホルモンの分泌に異常がある黄体機能不全などの場合、受精卵が着床してもはがれやすく、妊娠継続が難しい場合があります。

その時に黄体ホルモンの分泌を補う目的でも使用されます。

しかし、実はこれが次周期以降の新しい周期の卵胞発育を邪魔してしまうことになっているんです。

通常の排卵では大きく育った卵胞、主席卵胞から1つずつ排卵します。

体外受精を目的としたホルモン補充では小さな卵胞は退縮して体に吸収されますが、中等度サイズの卵胞ではhCG注射によって退縮できなくなり、次周期に持ち越され遺残卵胞になってしまうんです。

このまま遺残卵胞が残ってしまっていると新しい周期の卵胞と一緒にまた育ち始めてしまいます。

そこで問題となるのが、遺残卵胞の方が先に成長し、本来成長すべき卵胞の発育を妨げてしまうことなんです。

この遺残卵胞、E2も分泌するので検査、血液検査上のホルモン数値的には卵胞が十分に成長したと判断されてしまうんです。

けれど、実はそのホルモン値は遺残卵胞のもの。

成長するとはいえ、遺残卵胞からは妊娠に適した卵子を得ることはできないんです。

そのため、遺残卵胞を作ってしまった周期には妊娠することは難しく、それ以降も同じ方法を繰り返した場合には遺残卵胞を作り続ける周期が繰り返されることになってしまうんです。

遺残卵胞はhCGが作り出すものという事は知っておいて下さいね。

過度な刺激法によっては、次周期を乱したり、正常な発育の悪い周期にしてしまいます。

これを修正し、もとの周期に戻すのは本当に大変なことなんです。

例えば、ピルを使用して月経を止め、遺残卵胞を消す方法もありますが、ピルを使用できる卵巣機能があれば、まだいい方なんです。

年齢が高く、卵巣機能が低下している方は、ピルが使用できないケースもあります。

その場合には遺残卵胞のなくなる周期まで、何周期かを見送らなければなりません。

この時間って本当に遠回りになってしまいますよね。

年齢がいけばいくほど質の良い卵子は年に1〜2個とも言われます。

遺残卵胞が残れば残る程、質の良い卵子はできにくくなってくるので、年齢が高い方は特に過度な刺激法による不妊治療はしっかりと考えて納得して受けて欲しいと思います。

参考になれば嬉しいです。


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